禁じられた宮廷
〜作品紹介〜

CONTENTS
イントロ
作者について
作風について
単行本について

イントロ

catherine & henry

時は19世紀半ば、場所は西大陸の強国バナディス。
今年で14歳のキャサリンはフォートイースの名門ウィンスロウ家の令嬢。 めちゃくちゃ活発で前向きで聡明で気の利くお嬢様である。

そのキャサリンに、正確には父親であるエリオット卿に、ある日一通の手紙が届けられる。 隣国ヴィルドナのマクシミリアン公爵からのその手紙には、 公爵の子息でキャサリンの幼なじみフランツとキャサリンを婚約させたい、という旨が書かれていた。
なんでも、成り上がり貴族ルビンスタイン男爵の令嬢アンジェラという女性が フランツとの婚姻を強引に迫り、公爵家を乗っ取ろうとしているのだと言う。 そこで幼なじみのキャサリンを一時的に婚約者にでっちあげ、男爵家の横暴を阻止したいと。

正義感に燃えるキャサリンはフランツと公爵家を救うため、メイドのニーナと共にヴィルドナへ向かう。 しかしヴィルドナ行きの汽船は嵐の為に当面の間欠航。 このままではフランツとの婚約を発表する舞踏会に間に合わない。
そんな折り、キャサリンは港町で出遭った少女ケイティから、 治安の悪いデューター半島の荒野を馬車で突っ切れば 船より早くヴィルドナへ行くことができると教えられる。 早速ケイティとその仲間3人を用心棒に雇い、 ニーナの猛烈な反対を押し切って半島横断の旅に乗り出す我らがキャサリン嬢。
しかしそこは彼女が初めて目の当たりにする世界、 動物に変身する人々「アナザーレイス」の住む世界だった.................。

作者について

著者の茅田砂胡さんは1992年に作家デビュー、 1993年に始まった中央公論新社C★NOVELSファンタジア刊(中公文庫で再版)の 「デルフィニア戦記」(全18巻)で人気作家となりました。
その他に大陸書房刊(中央公論新社C★NOVELSファンタジアで再版)の「王女グリンダ」、 中央公論新社C★NOVELSファンタジア刊の「スカーレット・ウィザード」(全5巻+外伝1巻)、 「暁の天使たち」(全6巻+外伝2巻)、「クラッシュ・ブレイズ」、 角川ルビー文庫刊(中央公論新社C★NOVELSファンタジアで再版)の「桐原家の人々」(全4巻) などの作品があります。

私は「レディ・ガンナー」で初めて茅田砂胡さんの作品を読みましたが、 破壊的なインパクトはないものの、とてもしっかりした文章を書く人だと思います。 かれこれファンタジーを500冊ほど読んできましたが、 これほど綺麗で読みやすい日本語を使う人はなかなかいません。
作品の中に織込まれた複数のテーマを一つのストーリーにまとめていく構成力にも、 堅実でしたたかなものがあります。

一方、イラスト担当の草河遊也さんは1993年に漫画家としてデビュー、 1994年に始まった秋田禎信さん作の富士見ファンタジア文庫刊 「魔術士オーフェンはぐれ旅」のイラスト担当に抜擢され、 この大ヒットにより一躍人気イラストレーターになりました。 富士見書房から「オーフェン」の画集「鋼の後継者」「黒の聖域」も出ています。
この他に谷登志雄さん作の電撃文庫刊「邪鬼が来る!」のイラスト、 森岡浩之さん作の角川スニーカー文庫刊「月と闇の戦記」のイラスト、 あざの耕平さん作の富士見ファンタジア文庫刊「ブラック・ブラッド・ブラザーズ」のイラスト、 PS用RPG「サウザンドアームズ」のキャラクターデザインと ノベライズ版(富士見書房刊)のイラスト等をしています。

カラーではしっとりと落ち着いた、モノクロでは緻密で迫力のある画風を持つ人で、 完成されたデッサンを武器に構図を自在に使いこなします。
特に描く対象を2〜3グループに分け、一方を枠からはみだす程極端なアップで描き、 その他を奥に小さめに配置することで独特の遠近感を持たせる技法は、この人の真骨頂でしょう。
また建築物や装飾、服飾の描写も得意で、 「オーフェン」では19世紀イギリスの街並みや風俗を実に華麗に描いています。 今回「レディ・ガンナー」のイラスト担当となったのもこの点を見込まれてのことでしょう。

作風について

この作品のテーマは大きく二つに分けられるでしょう。 一つは台風娘キャサリンが巻き起こす勧善懲悪で面白おかしいコメディ。 もう一つは、キャサリン自身を含めた社会全体が 動物に変身する人々「アナザーレイス」および「インシード」に対して抱く理不尽な先入観と偏見への、 キャサリンの義憤です。
この二つのテーマが一つにまとまっていくことによって、 お気楽なファンタジーでも、説教くさい道徳書でもない、 絶妙なエンターテインメント作品になっているのです。

思うに、これは少年ファンタジーの皮を被った少女ファンタジーでしょう。
突出したギャグではなく文体全体で笑わせる構成、 そして理不尽で不条理な現実に対する憤りは、 前田珠子さん、若木未生さん、高瀬美恵さん、小野不由美さんと言った 少女ファンタジー作家の作品と共通するものであり、 言わば少女ファンタジーの根底に血の様に流れているものです。

そこに、少年ファンタジーを代表する草河遊也さんのイラストを持ってきたのは、 一体誰のアイデアか知りませんが、やってくれたなぁと思います。
この「レディ・ガンナー」をまず最初に読む人は、 「デル戦」で茅田砂胡さんのファンになった人が6〜7割、 「オーフェン」で草河遊也さんのファンになった人が3〜4割、 その他の人が0割でしょうが、 そのほとんどの人がこの作品の完成度を支持することでしょう。
少女ファンタジーと少年ファンタジーの垣根を破る作品としては1990年代終り以降、 榊一郎さんの「ドラゴンズ・ウィル」(富士見ファンタジア文庫刊)、 上遠野浩平さんの「ブギーポップ」(電撃文庫刊)、 賀東招二さんの「フルメタル・パニック!」(富士見ファンタジア文庫刊)、 安井健太郎さんの「ラグナロク」(角川スニーカー文庫刊)などが発表されていますが、 いずれも基本的には少年ファンタジーの側に立ったものです。
それに対し「レディ・ガンナー」は、角川スニーカー文庫という 少年ファンタジーの老舗から刊行されたとは言え、 明らかに少女ファンタジーの側から少年ファンタジーへとアプローチする 非常に注目すべき作品ではないでしょうか。

単行本について

次の6冊が出ており、更に1冊が刊行予定です。

表紙画像のリンク先は
bk1です。
表紙 レディ・ガンナーの冒険 レディ・ガンナーの大追跡 上 レディ・ガンナーの大追跡 下
タイトル レディ・ガンナー
の冒険
レディ・ガンナー
の大追跡 上
レディ・ガンナー
の大追跡 下
レーベル 角川
スニーカー文庫
角川
スニーカー文庫
角川
スニーカー文庫
初版 2000年4月10日 2002年1月1日 2002年2月1日
ISBN 4-04-423101-X 4-04-423102-8 4-04-423103-6
表紙 レディ・ガンナーと宝石泥棒 レディ・ガンナーと二人の皇子 上 レディ・ガンナーと二人の皇子 中
タイトル レディ・ガンナー
と宝石泥棒
レディ・ガンナー
と二人の皇子 上
レディ・ガンナー
と二人の皇子 中
レーベル 角川
スニーカー文庫
角川
スニーカー文庫
角川
スニーカー文庫
初版 2003年3月1日 2004年3月1日 2005年2月1日
ISBN 4-04-423104-4 4-04-423105-2 4-04-423106-0

今まで主に女性向レーベルで発表されてきた茅田砂胡さんの作品が、 「角川スニーカー文庫」という少年向けレーベルから出たとき、どんな反応が待っているのでしょうか。 そして、その強いメッセージ性はどのように受けとめられるのでしょうか。 とても興味深いものがあります。

そして茅田砂胡さんご自身は書かれるつもりがあるものの、 今後も「角川スニーカー文庫」から本として出せるかどうかは、人気次第だということです。
と言う訳でそこの貴方! 単行本に挟まっている「愛読者カード」に50円切手を貼り付けて角川書店に送りつけましょう。 4冊とも買った方は4枚とも送りつけましょう。 そうそう、この「愛読者カード」は全スニーカー文庫で共通なので、 他の本を買った時に挟まっている「愛読者カード」に 「れでぃ・がんなぁ」と書いて送ってもバレません。(駄目でしょ、それは)

2年に1冊でも良いですから、続けていって欲しいものです。

vincent

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