スニーカー編集部にガンマニアはいるか

2001年6月13日

今回は角川スニーカー文庫にまつわるお話をしましょう。

出版業界について詳しいわけではありませんが、 角川系の角川スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫、電撃文庫などは、 比較的作品に対して編集の力が強いのではないかと思っています。
というのも、かなり以前に書きました雑誌連載と書き下ろしの関係のように、 これらの文庫では編集部の販売戦略ではないかと思われる傾向がしばしば見受けられるからです。

例えば、このページのメインテーマである「レディ・ガンナーの冒険」ですが、 この本を読まれた方の多くは、 タイトルに対してあまりしっくりした印象を持たれていないのではないかと思います。
むしろ作者さんの書かれている「けむけむ大作戦」の方が作品内容をよく表しているでしょう。 ネタバレになってしまうので多くは書きませんが、 主人公が拳銃をぶっ放すかどうかは、この作品ではあまり重要な意味を持っていません。 極端な話、拳銃の代わりに大剣を持っていても構わないのです。 (ただし、金髪ローティーンな少女が異郷で大剣を振り回すと、別の作品になってしまうのですが。)

では何故「レディ・ガンナー」というタイトルが付き、 表紙で主人公の少女が拳銃を構えていなければならないのでしょうか?
それは現在の角川スニーカー文庫&ザ・スニーカー誌が ハード・ガンアクション路線を売りにしようとしているからではないかと、 私はつくづく考えています。

本屋で角川スニーカー文庫を見つけたら手に取って見てください。 なかなかの確率で、表紙の主人公が貴方に銃口をポイントしていると思います。

catherine

今、スニーカー文庫で売りだし中のシリーズと言うと 神坂一さんの「トラブルシューター・シェリフスターズ」、 安井健太郎さんの「ラグナロク」、 吉田直さんの「トリニティ・ブラッド」 が御三家ですが、この3シリーズとも、主人公は拳銃を持っています。
最近のスニーカー文庫の作品で、 主人公が拳銃を持っている作品をちょっと羅列してみましょう。

シリーズ
タイトル
作者/
イラストレーター
単行本1巻
発売年月
作者が受賞した
角川の新人賞
ラグナロク 安井健太郎/
TASA
1998/7 第3回
スニーカー大賞
(大賞)
セレスティアル
フォース
中川圭士/
伊藤明弘
1999/7 第4回
スニーカー大賞
(奨励賞、読者賞)
神咒鏖殺行 嬉野秋彦/
日野慎之助
1999/9 ―――
ビート・ガンナー 浜崎達也/
洋武
2000/1 「トリスメギトス」
で第4回
スニーカー大賞
(優秀賞)
トラブル
シューター
シェリフスターズ
神坂一/
光吉賢司
2000/1 ―――
レディ・ガンナー
の冒険
茅田砂胡/
草河遊也
2000/5 ―――
閃光の
ガンブレイヴ
椎葉周/
友紀克彦
2000/11 第5回
スニーカー大賞
(優秀賞)
ルナティック
カーニバル
秋葉千景/
伊藤真美
2000/11 第4回
学園小説大賞
(奨励賞)
トリニティ
ブラッド
吉田直/
THORES柴本
2001/3 「ジェノサイド
・エンジェル」
で第2回
スニーカー大賞
(大賞)
みんなの
賞金稼ぎ
池端亮/
白亜右月
2001/3 ―――
ランブル
フィッシュ
三雲岳斗/
久織ちまき
2001/6 「アース・リバース 」
で第5回
スニーカー大賞
(特別賞)

(嬉野秋彦さんは集英社、神坂一さんは富士見書房で新人賞を獲っておられ、 三雲岳斗さんはメディアワークスの新人賞と日本SF新人賞も獲っておられます。)

上の表はたった今、 私が角川ザ・スニーカー誌をばさばさとめくって突貫工事で作ったものなので 恐らく勘違いや抜けがあると思いますが、 昨今の角川スニーカー文庫で、 ガンアクションものが矢継ぎ早に発表されていることが 分かって頂けると思います。
それも、作者は主に角川の新人賞作家さんのようですね。 (ということは角川スニーカー大賞と学園小説大賞に応募する時はガンアクションが有利だったり?)
アカデミックに説得力を持たせるためには、 きちんと期間を区切って、新刊全部を調べて統計をとるべきなのでしょうが、 私にはそんな気力はないので悪しからず。(笑)

「ラグナロク」の突出したアクションが話題を呼んだのを見た スニーカー編集部が「よし、この路線だ」と思ったのか、 はたまた編集部にガンマニアな方が配属になったのか、 ともかくも角川スニーカーは、90年代終わりからハードなガンアクション路線に走っている様に見えます。
90年代後半に神坂一さんの「闇の運命を背負う者」、冴木忍さんの「妖怪寺縁起」、 大塚英志さんの「多重人格探偵サイコ」、グループSNEの「妖魔夜行」などのラインナップで サスペンスホラー路線に走ったころと比べると隔世の感です。

そして、「レディ・ガンナーの冒険」もそうした流れの中で出てきたタイトルだと考えるのは、 こじつけではないと思っているのですがいかがでしょうか?(笑)
ひょっとしたら「レディ・ガンナー」が角川スニーカー文庫から出ることになった決め手は 主人公が拳銃を持っていたからかも知れないですし、 逆にスニーカー文庫から出すなら主人公に拳銃を持たせるのが条件です、 などという裏取引があったのかも知れません。 イラストレーターの草河遊也さんに対して「表紙は主人公に拳銃を構えさせるように」 と編集さんが指定を出した時の光景が目に浮かんで来るようではありませんか。
妄想は膨らみます。(謎)

と、言うわけでして、今回は「こういう変なジャンルの見かたもありますよ」というお話でした (そうだったんかい、をぃ)。
私はかなりこういうのが好きです。 そして古くから良く付き合ってくださっている ファンタジーについてとても詳しい方々に得意げにこういう話をすると、 大抵「でも、もっと深く見たらこうではないかい?」 と目からウロコが落ちるようなカウンターを頂いたりしています。
ところがそういう聡明な方に限って、Web上ではあまり積極的に発言をされないのですよね。 能ある鷹は爪を隠すという格言もありますが、Webは書いてなんぼの世界ですから、 能無しで恥知らずの私は 事あるごとにこういううがった切り口をお見せすることができたらなぁ、と思っております。

ではまた次回。
お粗末さまでした。

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