魔法学園冒険記

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――第1章 迷い――
 
「ねぇ麻美、麻美ってば待ってよ。」
わたしは麻美を無意識のうちに呼んでいた。 麻美ってばわたしのこと忘れて置いていってしまっている。
「あら清子さん、そちらにいらしたんですの?私てっきり先に行ったのかと・・・・」
「そやそや。ご主人のことだから待ち伏せして脅かすかと思ってたで。」
コルンまでわたしのことを忘れていた。 いくら先に行くからって忘れはしないで欲しい。 ここはかの有名な迷いの森。 1度迷ったら2度と出てこられないと言う恐ろしい森だ。 ここでまんいち麻美と離れ、自分一人になっていたら、一様ハイ・エルフだから10日はかかる。 (森の娘だから森に離れていて迷いの森も平気だったりする。)
「清子さん、ここ先ほどお通りになられなかっでしょうか・・・・・」
麻美の言葉にわたしも今気づいた。 なぜ解るのかというと、麻美がこの森には行ってすぐの頃 「目印を付けておけば迷っても解りますわ。」 といってそれは名案だと、わたしのショートソードで木に傷を付けたのだ。 もしかしたら、木に傷を付けたことに森が怒ってしまったのではないのか。 わたしははじめそう思った。
ガサッ!ガサガサッ!
ふと麻美の後ろから何か動く物音がした!


――第2章 迷い・・・戦い?――
 
素早く後ろを振り向く麻美。 しかし、ピョンと出てきたのはただの野うさぎ。 それがまた木々の間に隠れていくと、 どさっと何かが血塗れになって倒れるような鈍い音(どんな音?)が耳に聞こえた。 おそるおそる木々の間から物音をたてないように観ようとしたが、
「清子さん私はお逃げになったほうがいいかと・・・・」
そう言って麻美はゆっくりと後ろに下がっていった。 がしかしその後にすぐに、
「ゴ・・・ゴブリンの群だー!!」
そう言って森の奥の方から息を切らしたふとっちょの男商人が駆け寄ってきた。


――第3章 迷い・・・戦い?・・・・・・いまだ――
 
「大変だ!モ・・・モンスターの・・・む・・・群が襲ってきたんだ・・・ おれの荷物をとられちまったんだよ。 明日っからおれの食いぶちがなくなっちまう。 なぁ何とか荷物を取り返してくれよ」
男商人は泣きながらわたしと麻美にすがりついた。 しかしわたしたちだって急がなければ行けない。 今日中に行かなければ今までの試験勉強が水の泡。 わたしは困り果てていたが、お優しい麻美の言う事だ。
「清子さん。私は神に背くようなことはなさいません。 この人を助けてさしあげましょう。 大丈夫です。神、阿儒羅を信じていれば何事も救われます」
やはりわたしの思ったとおりのことをいった。 しかもコルンまでが
「大丈夫やご主人。もし道に迷てしまっても、わてがお2人持ち上げて行きますさかい」
さすがにこんな事を言われてはわたしも声が出ない。 しかたなく男商人を助けることになった。 男商人は喜んだ末、草陰に隠れて
「わたしはここで君たちを見守ることしかできないが・・・頑張ってくれ少女達よ」
こんな事を言い出すのだ。そしてわたしの戦いは幕を切って落とされた。


――第4章 戦い・・・・仲間?――
 
ひとまず戦うことになってしまったわたしと麻美。 ゴブリンと言う初めてのモンスターを目の前にしてさすがに少し混乱した。 しかしゴブリンは倒しても倒しても増えてしまう一方。
「清子さん危ないですわ!」
麻美の叫び声と共にわたしは後ろを向いて確信した。 ゴブリンからの矢がわたしに向けて発射されていたのだから。
(もうだめだ!!)
そう追った瞬間にパシッとパチンコの玉が飛んでくる音がした。
(このゴブリンパチンコまで打てたの?!)
わたしは一瞬そう思った。その後わたしは気が遠くなっていった。

「き・・・・清子・・・・清子・・さ・・・ん」
わたしがゆっくりと目を開けるとそこはシルバーフィーリスルの宿小柳旅館のベットの上だった。
「麻・・・美・・・・・・・」
わたしはガバッと起きて麻美に聞いて迫った。
「麻美!ゴブリンの奴、弓矢使うのは当たり前と思っていたけど、パチンコまで使うの知ってた?!」
「き・・・よこさん、ぐ・・・ぐるじいです・・わ・・」
わたしはいつのまにか、力を入れていた。しかし、何処からともなく声が聞こえてきた。
「お前の友達ってバカかよ・・・・・」


――第5章 仲間?・・・・確信――
 
その声が聞こえてきたとたんわたしは麻美をつかんでいた手を離した。 するとこの部屋の中には麻美以外にも、2人の男の子がいた。 1人は窓際に座っている、青いバンダナをつけた子。もう1人は普通にいすに座っていた。
「麻美、この人達・・・・・」
「この方達は私が困っている所を助けてくださったんですの。まだお名前の方は聞いておりませんが」
麻美は少しくすっと笑いながらわたしに答えてくれた。 わたしはすでに立ち上がれるまでに回復していた。
少しまだクラクラするんだけどね。
「そうですわ。清子さんも起きたことですし、すぐ近くの食堂で夕御飯になさいませんか? あちらの方達のお話も聞きたいことですし。良いですわよね?」
麻美の意見にはここにいるみんなが賛成した。
すぐ近くの食堂とは、「一富士三鷹亭」のこと。 だいたい、ここから2.3分ってところだ。 実は、そこのウェイトレスをやっている子は、わたしの文通相手でもあった。 このところ文通してないから覚えているかは、分からない。 何回か来たことがあるんだけどすごくおいしい。 美味しいし、安いし何をとっても抜群。夜になると酒場のようににぎやかになる。
「いらっしゃーい。どうぞ奥の席にすわってくださーい」
私たちが席に座ると、話しは始まった。
「えーっとまず自己紹介ですわ。私の名前は桜田 麻美。 まだなりたてのクレリックですわ。実は記憶喪失なんですの。 そのかわり、色々な知識を知っておりますが」
麻美の自己紹介は簡単なほど終わった。
「ねぇ麻美。まだなりたてって、わたしたち冒険者支援協会に行って・・・・・・・」
「あっ、そうでしたわ。清子さんにはまだ渡してませんでしたわね。 ハイ、清子さんの冒険者パスポートですわ」
麻美はわたしに冒険者パスポートを渡してくれた。 わたしだけの冒険者パスポート。それが初めて渡された。それがすべての始まりだったのです。


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