悠久伝承歌 サーガ

1.迷宮での出会いへ戻る

――2.龍の伝承――
 
「まあとりあえず宿を見つけないとね」
辺りはすっかり暗く、今あいているのは宿と酒場くらいのものである
「そうですね、じゃあ僕の知ってるいいところがあるんですが、そこにしませんか?」
「ふうん・・・どこなの?そこ」
ルーンがそんなところを知っているとは・・・人は見かけによらないものである
「こっちです」
・・・・・・・・・・・・・しばし歩いて・・・・・・・・・・・・・・
「ここです」
目の前にあるのは普通の一軒家、とても宿に見えそうにない、なに考えてるんだ?
「どこみてるんです?ここですよ」
「はっ・・・」
何も考えていないのはあたしの方だった・・・
ふと目をやればそこには立派な宿、・・・ドラゴン亭と書いてある

「・・高そうね、ここ」
あたしは頭に浮かんだことをそのまま口に出していた
「それぐらい出してあげますよ」
ぬおっ! ラッキー!
「食費だけですよ(にっこり)」
・・・・ちっ
「とりあえず今日は休みましょ、捜索は明日から・・・」
あたしはまだ、きずいていなかった
「そうですね」
この町が、明日、どのようなことになるかなど・・・

ぼわああぁぁぁっっっっっっ!!!!!
「う゛どえ゛え゛え゛え゛え゛っっっっっっっ!!!!!」
あたしはとてつもないスケールの炎の音?を聞き、目が覚めた
「ああ、始まったようですね」
ゆーちょに言うルーン・・・・・・・・・な゛っっっっ?!
「ルーン!あんたいつからそこにいるの?!」
赤面しながら言うあたし・・・ナサケナイ
「今入ってきたばかりですよ、 龍の祭典(ドラゴン・フェスティバル)がそろそろ始まるので起こしに来てあげたんですよ」
なるほど、それなら納得がいく・・・・・龍の祭典?
「龍の祭典って?」
「知らなかったんですか?だからわざわざここを選んだのに・・・」
悲しそうに言うルーン、ってだからぁ!!
「だから何なの?龍の祭典って?!」

ぼわおおおっっっっっ!!!!!!!!!
いいところでまた炎・・・ってちょっとまてい!この宿まで燃えてないか??!!
「ルーン・・・この宿まで燃えてない?」
耳を澄ませば客たちの騒ぎ声・・・
「あはははは・・・・燃えてますねえ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「逃げよう!」「逃げましょう!」
声までハモらせ、呪文を唱え始めるあたしたち
なにせここは七階、走り下りる間に燃え尽きないとも限らない
ふと横を見るとルーンが青い顔をしてこっちを見ている
レビテート・ウィング(浮上翼)!!!
ふただび声をハモらせ宙に浮かび、窓から逃げ出すあたしたち
−レビテート・ウィング−・・・ 体を気流の流れで包み込み、空中移動を可能にする術、 以外と、コントロールが難しかったりする・・・
すなわち、呪文暴走確率99パーセント、暴発の女王の二つ名を持つあたしにとってこの術は・・・
「のひゃあああああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」

思いっきり術の制御に失敗し、ムチャクチャに飛びまくるあたし
「*****っ!!!!」
ルーンが何か言っているが、気流のせいであたしには何にも聞こえない
数舜後、体ぼっこぼこにぶつけまくったが、無事地面におりたったあたしたち
・・・もとい、地面に降り立ったあたしととっくに下りてたルーン
「ラネアさんっっ?! あれ!」
文句の一つも言おうとしたがルーンの指さす方をみて・・・
「本物の・・・雹炎龍(ブラスト・ドラゴン)??!!」
そう、町の頭上を飛んでいるのは紛れもない本物の龍、しかも雹炎龍だったのだ・・・
−雹炎龍−体内で冷気と火炎を作り出すことができ、炎、氷、両方のブレスを扱い、 炎と冷気に耐性のある龍、並以上(上級)の冒険者でも勝てないだろう・・・
そいつが炎と氷のブレスを吹きまくっていたりする・・・
「やっつけますよ!」
やっぱし言うと思った・・・
「はいはい!」
半ばやけくそで叫ぶあたし
ルーンが呪文を唱える・・・

「レビテート・ウィング!!!」
あたしをひっつかんで龍の居る付近まで飛んでいくルーン
「よっ・・・と」
あたしをおろし、再び呪文を唱えるルーン
「大気の精よ、光の精よ、我、汝らと契約を結びし者、我が命に従え、 大気よ光よ、ただ一筋の閃光となれ、 ただ一筋の雷鳴となり、戒めに背くものにその力をもて、滅びを示せ・・・」
ルーンの十八番、ディメイト・ブレイズ(滅陣雷漸衝烈激)!
−ディメイト・ブレイズ−目標の外部を雷撃で焼き尽くし、内部の数点のポイントを無へと返し、 破滅へ導くという術、人が扱える呪文の中で、一番凶悪な呪文、すなわち、最強の呪文といえる
余談だが・・・以前ルーンが酔っぱらったときにこの呪文を口ずさんでいたような気がする・・・ 酔っぱらうと見境がなくなるやつである・・・

「ディメイト・ブレイズ!!!!」
ルーンが差し出した左手に雷撃が収束し、それは虚空をわたり、雹炎龍のすぐそばに出現するっ!!!

ずがずがずがずがずがずがずがずがずがずがずがずがっっっ!!!!
雷撃が龍の鱗をはぎ取り、消し去り、無へといざなう
きいいいいいいん・・・
耳障りな音をあげて、雷撃は龍の体内へ虚空をわたって移動する
ずばしゃおおおおおっっっっっっっっっ!!!!
一瞬のうちに雹炎龍は、その悲鳴すらあげぬまま、肉片すらも残さぬままに、無へと回帰する
「・・・いやあお見事お見事! 助かりました!」

「龍の祭典の目玉、本物の龍の放し飼い用につれてきた雹炎龍が暴走しちゃって困ってたんだ」
いったいどこからわいて出たのか、あたしたちの周りに町の人が集まってきている
「いえ・・・なんてことありませんよ」
軽く答えるルーン
「どうしてもって言うのなら、お礼くらいはもらってもいいですよ(にっこり)」

当然のことを言うルーン
「当然ですよ、はい、」
と、差し出された革袋をあたしがさっ、とかすめ取り、本題に入る
ルーンは・・・あ、やっぱし怒ってる・・・
それはさておき
「ねえ、こういう特徴の男知らない?」
あたしは昨日、迷宮でルーンに言ったことを、そのまま町の人に聞く
さすがにルーンもふてくされるのはやめ、町の人の反応に耳を傾ける

「・・・さあ?しらないなあ」
しかし、誰一人として知っている人は居なかった
「そうですか・・・」
がっかりというルーン
「仕方ありません、又違う町で探しましょう」
「そうよね、じゃ、さよなら」
あたしたちは町の人に別れを告げて、ほかの町へと歩き始めた

「あああ! 龍の祭典!!  しきりなおしたかも?!」
途中でルーンがこう言い放ったが、もはや後の祭りである
「ま、あきらめなさいって」
「しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく・・・」
あたしは
途中で龍の祭典のことを聞こうとしたが・・・
こんな調子なので、又来年ここへ来て、どんな祭典か確かめることにした
しっかし・・・妹がさらわれたって言うのに・・・のんきなやつである


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