「何か・・・静かな町ね・・・」
あたしはこの町に入ってからの疑問を口にした
あたしたちはドラグーンを出たあと、この、フォレストという町に来ていた、
町の作りは基本的な外壁重視の町で、マップがないと迷うような作りをしている、
なんでも、子羊のローストが名物だという
・・・ついでに、なにやら有名な神殿があるそうだが・・・どーでもいいや、そんなこと(笑)
何をなまけているなどというなかれ、腹が減っては戦ができぬ、
人捜しとて同じことという有名な言葉を知らないのか?!
(ルーン:ありませんよ、そんな言葉・・・ぐっ?!・・ちょっ・・・首は・・・)
・・・何も見えない聞こえない(ルーン:聞いて・・・くださ・・・がくっっ・・・)
「なぜだろう・・・?」
と、疑問をルーンに投げかける・・・おっとっと、青くなっちゃってる、そろそろはなそうかな
「・・げほっ・・・げほっっ・・げほっっっ・・・まったく・・・ラネアさんは凶暴なんだから・・・」
ばきっ どこっ ずがっ
「ふ・・・他愛もない」
と、あたしは気絶したルーンに向かって言い放つ
「でも・・なんでだろ?」
いっこうに動き出す気配のないルーンを引きずりながら、町をめぐる
話し声、動物の鳴き声・・・何一つ聞こえてこない
「仕方ない、ルーンにも聞いてみるか・・・」
あたしはルーンに向かってヒールをかける
トレジャーハンターの基本、ヒール、ラルア・バブル(泡毒解法)ぐらいはあたしでも使えるし、制御もできる
「・・っ!何するんですか!まったく!」
気がついたルーンはふてくされている、まったく、心の狭いやつである
・・・無理ないかもしんない
「まあまあ、ところでさ、この町・・・静かすぎない?」
「・・・確かに、そうですね」
きちんと答えてくれる、こういうところは人間できてると思うのだが・・・
「!!!あなたがたっ?!」
突如として裏道から声がかけられる、・・・あたしたちに向かって、だろう、きっと
「呪文を扱えるのですね?!」
と、いいつつ出てきた・・・16前後の男で薄いグリーンの瞳に、空色の髪(ショート)、
レザーアーマーにショートソードという感じの・・・傭兵かな?
が、声をかけてきた
紹介し忘れていたが、あたしは淡いブルーの瞳、うす茶色の髪(ロング)、精神剣とショートソードに
とある迷宮で手に入れたエメラルドの原石で作られた鎧を
ミスリルという半透明魔法物質で強化、コーティングし、使っている
ルーンはきれいな空色の瞳、銀色の髪(ロング)、
ファルシオンと言う剣とライト・アーマーというおよそ魔道士に似つかわしくない装備をしている、
本人談、何でも動きやすく、守備性能の高い装備の方が役に立つ、らしい、
剣の腕はあたしがレクチャーしたおかげか、はたまた筋がよかったのか、
一流戦士と同じぐらいの強さを誇るようになっていた
付け加えるが、あたしたち二人とも、マントをつけている、
あたしのは淡いグリーン、ルーンのは黒に魔道文字の縁取りというマントをつけている
「確かに・・・扱えますが、それがどうかしたのですか?」
そうなのだ、この大陸、ファルティリアでは呪文を扱うぐらい、大したこともない
「・・・この町の事情を知らないのですか?」
『はい?』
間抜けな声を上げるあたしとルーン
「ふう・・・、わかりました、簡単にお話ししましょう」
「この町の冒険者ギルドのマスター(評議長)が、裏で手を回し、
新魔法の人体実験のために町の人を実験台(モルモット)にしているということが、
五日前に判明したんです」
なっ・・・!
「人体実験・・・どのような呪文ですか?」
・・・ルーンは動揺というモノを知らないのだろうか? 顔色も変わらないし、
「複数の目標を瞬時にマリオネット(操り人形)化する事ができる、というモノです」
なる・・・
マリオネットにする術、というのは確かにある、
しかし、禁呪となって魔道士教会でも触れられないし、
呪術の一派なので、呪文発動まで、数日という長い期間がいるということがあり、
今ではほとんど扱う者がいなくなってしまったわけである
その上、マリオネット化された目標は、よくて2日、ヘタすれば半日で命を落とす
「そのため、私たち、戦える者数十名が、反乱を起こし、マスターとやり合っている最中なんです、
今は停戦状態にありますが」
「なるほど・・・」
妙に納得しているルーン
「お願いです!見ず知らずの旅人に頼むのもなんですが手伝ってくれませんか?!
成功報酬はそれなりのモノを用意します!」
「うーん・・・」
あっさり引き受けるのもね・・・妹探しの最中だし
「引き受けましょう(あっさり)」
がくっ・・・
ルーン・・・あんたは何を考えているの・・・・・・
「そうですか!ではこちらへ!」
といって駆け出すあんちゃん
「行きますよ!ラネアさん!」
「はいはい・・・」
何かこのごろルーンにいいように扱われてるような気がする・・・
「ここが反乱軍の本部です」
んー・・・普通あっさりとこんなとこまで案内したりはしないモノだけど・・・
あたしたちが敵じゃないか、と疑うのが普通・・・
「リーダーはどんな人ですか?」
ルーン・・・君には猜疑心(さいぎしん)がないのかい?
「・・・私がどうかしましたか?」
『う゛どわ゛あっ??!!』
中からいきなし人が出てきた・・・ ?私のことってことは・・・
「あなたがリーダー?」
とあたしは出てきた男(20歳ぐらい)に問う
「ええ、いちよう、そうなっています・・・ところであなたたちは?」
「あ、この人たちは・・・」
と、男の人が説明する
「・・・なるほど、よくわかりました、これからよろしくお願いしますね」
『こちらこそ』
「私はミスト、ミスト・ミトラティオルです、これでも19歳ですよ」
「あたしはラネア・フェナンティス、ラネアって呼んでくれていいわよ」
「僕はルーン・ライザラード、僕もルーンでいいですよ」
ミストは透き通るような水色の瞳、きれいな水色の髪(肩の下ぐらいまで)、
んー・・・ショートスピアにミスリル・アーマーかな?をつけている
(ミスリル・アーマーは制作過程で防御性能を上げるため、とある物質と合成するから、
鎧自体は半透明じゃない)、おそらく槍術士(スピア・ファイター)だろう
「・・・という作戦で動こうと思う」
あたしたちは簡単な自己紹介のあと、
作戦会議を行うらしいので、家の中で会議内容を聞いていたわけである
家自体は少し小さいが、それでも数十人が集まるには十分である
決して華美ではないのに、どこか落ち着く感じがある、いい感じの家なのだ
「わかりました、が、戦力を5つに分けるのは、きついのではないでしょうか?」
その他大勢:その壱がもっともなことをいう
分断作戦、とはいっても、30名前後(だと思う)の部隊を5つに分けるのは、きついだろう
「いいえ、手段はきっちりと用意しています」
ほほう?
「ある術を使うと、個人の能力そのままのダミーが作れるわけです、それも、何人でも」
なっ・・?!
「ミストさん!そんな術を使ってまで勝とうとはっっ?!」
「皆さんの命がかかっていますよ」
「他に方法があるでしょう?」
人権、生命を脅かす術、”ブロウ・サーバント(人身分裂)”
そんな術は・・・
「そうですか、なら、その方法を教えてくれますか?コリスティさん?」
コリスティとは、あたしたちを案内してきてくれた人の名前である
「それは・・・」
と、言葉に詰まるコリスティ
「空中から攻めましょうか?」
コレはルーンの意見・・・レビテート・ウィングかな?
「全員では無理でしょう」
「んーーー・・・そうですね」
そうなのだ、全員が全員使えるわけではない
「ではやっぱ・・・」
とミストが口を開いたそのとき!
どぎゃぐおっ!
『う゛わ゛あああっっ??!!』
急激な振動っ?!
「ちっ!見つかったかっ!」
ミストがさけぶっ!
「ルーン!偵察!」
「レビテート・ウィング!」
窓を突き破って外を見渡すルーン
「なっ・・!空かっ!」
そ・・・空あっ!?
「ダメです、このままじゃあ・・・」
と、帰ってきたルーンがいやなことをいう
「くそっっ・・・・」
ミストが悔しげな声を上げる
「・・・!!!しばらくの間応戦できますか?!」
ルーンが何かを思いついたようだっ!いいぞっ!るーんっ!
「レビテート・ウィングで浮いてるのなら・・・」
とミストがいう
「そうです!じゃあ、ちょっとの間がんばってください!」
といい放ち呪文を唱え始めるルーン
「よし!みんな!打ち落としてやろう!」
『おおっ!!』
この辺のカリスマはすごいモノがあるぞ・・・ミストよ
『ウィンディ・ブラスト(風激魔光陣)っ!!』
幾枚の刃が、上空の敵を打ち落とす!
『レイズ・ヴォルト(霊電撃術)っ!!』
電撃がほとばしり、何人かを落下させるっ!
「・・・心に潜む光の悪魔、我が魔力(ちから)に反応せよ、我が魔力と同調せよ、
闇の刃が心を砕き悪魔の剣が命を奪う、烈光と化し光の悪魔、
我らが瞳にそれは映らず、我らが心をそれは表し、等しき滅びが奴らを襲う・・・」
コレは・・・聞いたことがある、
遠い昔、大量殺人用に開発された術の変異により生まれ、
今では知る者はほとんどないと言われる、精霊魔法、精神系統に属す、闇と光の刃の呪文・・・
「バスカイア(極闇光烈璽励法陣)っ!!」
−バスカイア−
不可視の精神派を生み出し、目標に接触と同時に、脳に進入、
中枢神経を純エネルギー精神派にかえ、目標を消滅させる術、
精霊魔法の中で、最強の殺傷力を持つ術、その上、複数攻撃も可能である
どぎゅらおぉぉぉぉっっっっっ!!!!!
上空の敵が、一度に消滅するっ!
『・・・・・』
ミスト(他大勢)は呆然としている、まあ、当然か
「や・・・やったあっ!」
「あまい・・・」
ぬおわあっ!
窓の下に潜んでいたやつが急に声を上げる
ちいっ・・・上空ばっかりきにしていたからっ・・・
「アイス・ヴァルティー(氷激陣羅法)・・・」
アサッシン風の男が氷の塊を打ち出すっ!
しまったあ!
−アイス・ヴァルティー−
氷の塊を打ち出す術、アレンジ次第でその氷を爆発させたりと、数多くのアレンジ法を持つ
だぎゃぐおっ!
氷の塊が砕け散り、一つ一つが襲いかかる!
『のひゃああああっ!』
ずごがごどぎゃぐおっ!
「いたたたた・・・」
ボッコボコにやられたあと、ふと周りを見渡すと・・・
「ばかやろーっ!」
当たり所が悪かったのか、はたまた運が悪いのか、20人近くものびている
ううう・・・役立たず
「フレイム・アロー(火炎矢)・・・」
あたしが叫んでる間に暗殺者風男は呪文を発動させる!
−フレイム・アロー−
矢を形取った火炎が目標に襲いかかる、術者が望む本数の矢を放つこともできる、
ただし消費する魔力は比例してあがる
「のひゃあああああっ!」
数十本の炎の矢があたしたちをねらう!
「あ、あぶなひっ・・・」
あたしとルーンとミストは間一髪のところをよける!が・・・
他の奴らは全員黒こげ・・・
こいつら弱いぞっっ!
「ブローディス(地暴発光鈴)・・・」
−ブローディス−
大地を爆発させる術、範囲は狭いので、よく考えて使うことが必要となるわけだが・・・
連発で使うと目くらましにもなる
どぎゃどぎゃどぎゃどぎゃどぎゃどぎゃどぎゃどぎゃどぎゃっっっ!!!!
「げほっ・・・げほっ・・・」
やっぱし・・・目くらまし・・・
「ウィンディ・ブラストっ!」
ルーンがさけぶっ!
「ふん・・・」
が、暗殺者は妙な剣を振りかざし、風の刃を打ち砕くっ?!
バカなっ?!魔法剣っ?!
「フリーズ・ローディ」
しまった・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あれ?動ける・・・
「ライト」
と、あたしは呪文を唱える
辺りが少し見やすくなった
「・・・・ミスト?」
と、あたしは呼びかける
「ミストっ!?」
しまった・・・ミストにかけた訳か・・・
「・・・・・くそっ」
隣でルーンが悔しげな声を上げる
「・・・ラネアさん?」
「なに?」
「ラネアさんに呪文を教えておきましょう」
「・・・本気?」
「シード(封術)という呪文をかけると誰でも扱えます」
「それならなんで最初からしなかったの?」
「一人あたり3回、それ以上かけると人格破壊の可能性があります」
「1回なら平気なんでしょ」
「ええ」
「じゃあかけてちょうだい」
「・・・・・・・シード」
「・・・なにかあった?」
「ええ、コレでラグラルト・ヴォルトの呪文が精神集中だけでつかえるはずです、
ま、魔力は消費しますけど」
これからの戦い、呪文ぐらい扱えないとってことか・・・
又、血が流れちゃうな・・・
|