悠久伝承歌 サーガ

4.悲しみの大地へ戻る

――5.運命の予兆――
 
「ふう・・・」
あれから一月・・・
あのアサッシンは依然見つかりじまい、よって、ラゼェルヴァルクも行方知らず
ため息の一つもつきたくなる
「グレイさん・・・」
・・・ルナの、この心配そうな声が又、 私の心に重くのしかかることを、彼女はきずいているのだろうか?
「・・・次はフォレストにでも行くか?」
「神殿がありましたよね」
フォレストには有名な神殿がある、が、どんな神をまつっているのかは・・・すまん、私は知らない

「とりあえず、ギルドまで行きましょうか?」
僕はたずねる
「・・・それしかないようね、でも、準備はきちんと整えておかないと・・・」
ラネアさんが答える
           ・・・小一時間後・・・
「さて、行きましょうか!」
結局二手に分かれることになった、 裏口に戦力を集中させ、その間に僕とラネアさんで正面から突入、と言うわけ
「皆さんに神の祝福を・・・」
「何いってんのよ、プリースト(神官)じゃあるまいし」
「・・・・・ブレス(祝福)」
辺りをほのかな光が包む
「???ルーン、何、その術・・・」
「祝福をもたらす、と言って結構マイナーな術ですよ、プリーストの間では、ね」
「・・・なんでしってんのよ」
「さて、どうしてでしょうかね」
と言って、僕は微笑んだ
「・・・ま、いいわ、行きましょ」
ラネアさんが言う
「ええ」
「・・・あの」
コリスティが声をかけてきた

「なんでしょうか?」
僕は答える
「マスターは・・・あんな人じゃなかったんです、もっと穏やかで・・・親切で・・・ 人体実験なんか行うような人じゃあ・・・」
・・・?
「では・・・操られているとか、とりつかれているとか言いたいわけですか?あなたは」
もしそうなら少しやっかいですね・・・
「かもしれない、と・・・あ、もう行きますね!」
「あ!ちょっと!」
行ったときにはもう、コリスティは外に駆け出していた
「・・・どう思う?さっきの話」
ラネアさんが心配そうに聞く
「さて・・・どっちにしろ・・・めんどくさい仕事ですね・・・これは」
・・・あんたがのこのこ来たんだろーがあっ! と言う声が聞こえてきそうですね・・・
「あんたがのこのこ来たんだろーがあっ!」
・・・ビンゴ






「むう・・・なんだかいやな雰囲気の街だな・・・」
「・・・フォレストってこんな街なのでしょうか?」
「・・・かもな」
私たちは昼過ぎに、フォレストについた・・・ ついたのはいいが、なんだか戦争中の街を訪れているような雰囲気だ・・・

「あ!兄さん?!」
ルナが声を上げる・・・兄さん?!
「ルナ・・・兄さんだってっ?!」
「あ・・・行っちゃった・・・」
残念そうな声を上げる・・・
「ルナ?!」
「!」
「え・・・ええ、確かに、あの人影は兄さんだったわ・・・ もう一人、ラネア・フェナンティスって言う人・・・に見えた人もいたもの・・・」
らねあふぇなんてぃす・・・
「・・・暴発の女王・・・か」
「ええ」
「とにかく!私は兄さんの後を追います!」
「なんだって?!」
「兄さんにも理解してもらわなくっちゃ!」
と言うが早いか駆け出すルナ
「ちょ・・・ちょっと待て!」
ついで私も駆ける
・・・めいっぱい走ることなんてなかったからな・・・
きついか・・・???






「あれ?」
走りながらぼうっ・・・と街を見ていたルーンが声を上げる

「どうかした?」
「さっき・・・ルナの姿が見えたような・・・」
「!!??」
まさか・・・ね
「・・・気のせいだったかもしれませんが」
「緊張してるから、幻でも見たんじゃない?」
「・・・そう思いますが・・・」
「もしホントだったとしたら・・・」
とあたしが言う
「・・・どうする?引き返す?それとも・・・このまま行く?」
あたしはたずねた
「・・・いえ、このまま行きましょう!ミストさんや、他大勢の命がかかっているんですから!」
決意あらたにルーンが答える
「よし!それでこそルーン!」



「さて・・・と」
冒険者ギルド、魔術師ギルドのまえに、あたし達はついた
「・・・(ぶつぶつ)・・・」
ルーンは何か術を詠唱している、たぶん”姿消し”だろう
「インビジビリティ(姿消し)!」
「やっぱりね」
あたし達の体が、足の方から、見えなくなってゆく

−インビジビリティ−
精神の精霊の力を使い、自らの姿へ向かう光の屈折率を調整し、他人から見えなくする術

「さて・・・あとは合図があるまで、そこら辺に隠れてましょう」
「ええ」
見えないと言っても姿があるため、隠れておいた方が安全、と言うことになる
「何か術を打ち上げるって言ってたわね・・・」
「ライトでしょう?」
「まさか・・・こんなに明るいのに」
「そうですね、では何・・・」
         ばちばげばきどげびしっ!!!
「何っ?!」
雷撃の音っ?!
「顔を音のした方に向けると・・・」
「サンダーバーン(雷爆発)っ?!」
ルーンがさけぶっ!

−サンダーバーン−
空中に雷を放電し、爆発させる。 とても危険な呪文で、へたをすると、自分までダメージをくらう。 いちかばちかのの一撃必殺技なのだが・・・たいしてつかえない

「よりによってあんな目立つ術をっ!」
ルーンがぼやく、が!
「んなこと言ってる場合じゃないわよ!」
「・・・行きましょう!」
よろしい!
「待て・・・」
背後から声がかけられる

「お、おい、ちょっと待て!」
あたし達は無視して走っていった

「ここ、どの辺り?!」
ルーンにたずねる
もうあたし達は魔術師ギルド内に進入している
「大廊下・・・ですから、マスターの部屋は、まっすぐ行けば見つかるはずです!」
「そう!じゃ、行きましょ」
「ライト」
「!!!」
「く・・・」
いきなり飛んだライトによって、あたしは眼を焼かれてしまった
「ルーン!平気?!」
「ええ、ちょっと待っててください、すぐ、カタを付けます」
「そううまくいくかな?」
この声は・・・さっきあたし達に声をかけた人物・・・

「うまくいきますよ、だって・・・」
と言って、剣のふれあう音がする
「これで、おしまいですから」
                ひゅっ・・・
「いつっ・・・」
「さよなら」
「ふん・・・足に針が刺さったぐらいで、どうとなるものでもないよ!」
「レイズ・ヴォルト(霊電撃術)」
                ばちっ・・・
「ぐあああぁぁぁぁっっっ?!」

−レイズ・ヴォルト−
微量な電撃を呪文詠唱なしで、意志力を使い、呼び出すことができる、 ただ、霊的な力を使うため、ネクロマンサー(死霊術士)などの霊的な力の制御ができる者は、 驚異的な電圧を放出したこともあるらしい

「っく・・・やらせるかあっ!」
ほえる敵!
「エアーナイフ(風空刃)!」

−エアーナイフ−
鋭く、斬りつけ可能な真空の刃で目標を切る、 手に持つわけではないので、わかりやすく言うところの、かまいたちを作り出す術である、単体攻撃用

       ざくざくざくざくざくざくざくざくっっっ!!!
「ぐ・・・はっ・・・」
どさっ・・・

「ラネアさん?!」
あたしはゆっくりと目を開ける
「・・・見えますか?」
「何とかね・・・」
辺りを見渡すと、傭兵風の男が黒こげになった上、なます切りになって倒れていた
「時間を消費しました、急ぎましょう」
「ええ」



「ルナ・・・待って・・・くれ・・・」
私は遙か前方をゆくルナに向かって
かすれる声でそう言う
「・・・」
やはり聞こえていないのか?
聞こえていて無視しているのか??
「も・・・ダメだ」
私が疲れ果て、膝をついたその瞬間
         ばちばげばきどげびしっ!!!
「何だ!この音は!」
雷撃のような音がしたが・・・
「魔術師ギルドか、ルナの仕業かっ?!」
よく見ると、魔術師ギルドの方にかすかな雷撃のあとがある
それと同時に・・・
「きゃあっ?!」
ルナの叫び声! 魔術師ギルドの方からだっ!
「くそおっ!」
さて・・・明日は筋肉痛かな・・・?



「ここね」
一枚の、大きな扉のまえに、あたし達はいた

「いいですか・・・行きますよ」
無言でうなずくあたし
「・・・」
ルーンも呪文を詠唱する
二人顔を見合わせ、うなずく
                 ばあんっ!
威勢良く扉を開け、あたし達が中に入る
「ラグラルト・ヴォルトっ!」
あたしが叫ぶ
「ウィンディ・スラッシャー(破壊風)!」

−ウィンディ・スラッシャー−
突風を呼び出し、目標を吹き飛ばす術、単体攻撃用である

が・・・
「ディメイルシード(異結界)」

−ディメイルシード−
目標(複数可)の周りの分子の構成を記憶し、目標の回りにとりつかせる防御魔法
それは記憶したときの状態を保とうとするため、剣や魔法がそれに振れることが出来なくなる、振れようとした瞬間にはじき飛ばされてしまう
と言う魔法である

マスターがそれをうち消す・・・って!
「女の・・・人」
「うそおっ!」
目の前にいたのは、知的な、一人の女性だった
「って、あんま関係ないね」
正気に戻るあたし

「・・・・・・」
ルーンも正気に返り、呪文を唱える
が・・・それより先に
「フレイディア(火炎被爆呪)」

−フレイディア−
小爆発が起こり、軽い爆風と炎がおそう、基本的には単体攻撃用

                 どがっ!
あたしの目の前で、何かが爆発するっ!
「うひゃあっ!」
危なかった・・・
・・・何でルーンには行かないのようっ!!
「フレイム・アロー!」
そんなことを思っている間に、ルーンが呪文を完成させる
                 ぼひゅっ!
数十本の火炎の矢が、マスターを襲う!
「・・・」
が、その全てを、マスターはよけきり、ルーンに向かってタックルする
「つっ・・・」
「ルーン!」
「ラネアさん・・・ミスってしまいました・・・」
すまなさそうに言うルーン
でも・・・
「動かないでっ!一撃食らわしちゃるっ!」
ルーンの顔が真っ青になる
「ラグラルト・ヴォルトはやめてくださいねぇっ!」
絶叫にも似たルーンの悲鳴が、部屋の中でこだまする

「んなことしないわよ・・・こうするの」
と、言い放ちあたしはオリジナル呪文を詠唱する
さて・・・きちんと発動するかな?!

「無よ、我は無の母たるもの
我が命に従え、我が心に集え
我が心を介し、その虚無たる入り口を開けよ
我は無の母たるもの
そう・・・
我は・・・」
              「バニッシュ(無)!」

−バニッシュ−
無への入り口を一瞬開放し、目標に予測不可能な効果を与える、かなりギャンブル的意味を持つ術
ラネア・フェナンティスが作り上げた術

無への入り口が、一瞬開放されるっ!
「あ・・・」
                ばたっ・・・
マスターはそのまま倒れた!
やった!成功っ!
「・・・完璧」
そっとつぶやくあたし
「助かりましたよ、ラネアさん」
ルーンがこっちに来る
「まさかあんな術がつかえたとは・・・オリジナルでしょう?」
尊敬の念を込めて、ルーンが言う
「ま、ね」
軽く受け流すあたし

「それより・・・」
と、ルーンはマスターを見る
「生きてるかなぁ・・・?」
実はあたしも心配だったりする
「・・・大丈夫、生きてます」
ルーンが答えるっ・・・て、ルーン!
「ルーン?!」
見ると、口の近くに耳を寄せ、呼吸を聞いているルーンの姿があった
「何です?」
「あ゛・・・何でもない」
言ってあたしは本題に入ろうとする
「ヒール」
マスターを回復させるルーン
「・・・はっ」
んー・・・何ともわかりやすい目覚めかた
「私は・・・いったい」
「はあ・・・」
ルーンが大きなため息をつく
「やっぱりとりつかれていましたか」
「へ?」
妙な声を上げるあたし
「今も、とりつかれたままですし、ね」
と、ウインク一つ
・・・始めて見たけど、結構かっこいいかも

「わかった?やっぱりねー」
お気楽な声を出すマスター
「私はルディスって言うのよ、550年の時を、ずっと独りでいたの」
「へえ・・・だったら本体はおばあさんですか?」
軽く言うルーン
「いいえ、私は死なない、本体はコールドスリープさせているもの」
げっ・・・
「では、何のために、550年の時を、独りでいたのですか?」
相変わらず冷静ね・・・ルーン
「それは私の
ワケを口にしようとしたそのとき、開いていた扉から、1人の少女が駆け込んできた
・・・よく見るとあの子は
「ルナっ!」
ルーンが叫ぶ


6.運命の歯車へ進む

猪鹿亭入り口 ★★ 印刷屋
竜人館 トップページ
このページに関するご意見、ご感想は、
ぎをらむ、こと嬉野通弥(ureshino@i.bekkoame.ne.jp)まで。