「兄さん!」
ルナが駆け寄る
「無事だったんだな」
「ううん、兄さんにも、納得してもらいたくって、ここに、来たの」
???
「・・・納得?」
いぶかしげな声を上げるルーン
さて・・・こっちはこっちでミストの居場所でも聞こうかな
「ルディス、あなた、死してなお、550年の時を暮らしてきたの?」
「・・・愛する人を、待っているの」
げげ・・・こういう話苦手だあ・・・
と、思ったとき・・・
「ルナっ!!!」
又1人、部屋に転がり込んできた・・・と思ったら
「グーレーイー」
怒りを込めて、あたしは言う
「う゛・・・ラネアか・・・いや、いまはそんなことを言っている場合ではない!」
と、ルナの方を向き
「ルナ、さっきの悲鳴は?」
悲鳴?
「悲鳴って・・・何ですか?」
ルナが答える
「何っ?!」
「これで・・・役者がそろってくれたようね」
ルディスが言う
「悲鳴を私の耳にとどけたのは、おまえか?」
「ええ・・・」
「何のために!」
「彼は、約束してくれたのよ、必ず、かえってくるって、必ず、迎えにくるって・・・」
???
「いったい何を・・」
あたしがルディスに問おうとしたら
「しっ、ラネアさん」
・・・ルーンに止められてしまった
・・・おとなしく、聞いておくか
「どういうことだ、私にはさっぱりなのだが・・・」
グレイがルーンに問う
「実は・・・」
と、簡単にグレイと、ルナに説明する
「なるほどな・・・」
「・・・よく、わかったわ、兄さん」
「・・ルディス、わかりやすく言ってくれる?」
あたしはルディスに言う
「・・・私と、コリスは愛し合っていたのよ」
うわー・・・やっぱり苦手だ、こう言うの
「550年前のちょうど今日、魔道戦争があったことは知ってるでしょう?」
−魔道戦争−
ファルティリア大陸全土に、わずか10日というスピードで戦火を広げていった
堕天使グルクリフェリスの光臨による被害であったが
驚異的な魔道技術により
わずか三週間というスピードで堕天使は討伐・・・精神界へ戻り、戦争は終結を向かえた
「知っています」
答えるルーン
「その日、コリスは私に
「必ず、グルクリフェリスを倒して、帰ってくるからな、帰ってきたら、そのときは・・・」
そう言って、魔人討伐に出かけていったの」
と、涙目になって語るルディ・・・彼女
「三週間後、魔人は討伐され、戦争は終わった、
終わったのに、それから1日たっても、2日たっても、彼は帰ってこなかった・・・」
「・・・」
「私は心配になって、彼の所属している魔術師ギルドなら、何か知ってるんじゃないかって思って、家を出ようとしたの」
「ルディスさん・・・」
「そのとき、一通の手紙が送られてきたの」
『コリス・リバティは、逃げ帰る寸前に堕天使にかけられた呪いにより、死亡』
・・・そうだったのか・・・
『魔術師ギルド当方でも、全力を尽くしたものの、ご不幸に見まわれてしまい、申し訳ございませんでした』
『なお、死体のほうですが、体が崩れるように消えていったため、当方にもございません』
「私は、その手紙を、すぐに燃やしたわ」
「ルディスさん・・・かわいそう」
ルナが言う
「そして、私は魂の存在となり、永遠に彼を待つことにしたの」
「何てことをしたものだ・・・」
グレイが言う
「後悔なんてしてない、彼は、ウソをつかなかったもの・・・」
「だったら何故、こんなことをしたのです?」
ルーンが問う
「大陸中の人を操って、彼を捜してもらうためよ」
なっ・・・
「なんてことを!」
グレイが言う
「もう、魔法は完成したわ、あとは、唱えるだけ、それだけで、すぐに彼が見つかる・・・」
「よさんかっ!」
グレイが突撃する!
が・・・
ばちいっ!!!
グレイははねとばされてしまった
「もう私の邪魔はしないで」
「なんて・・・やつだ」
「・・・」
そしてルディスが呪文を唱え・・・
「待ってくれ、ルディス!」
『?!』
コリスティが、部屋に転がり込んできたっ?!
「やっと、やっと帰ってきたんだよ!約束どおりに!」
コリス ティ・・・
「皆さん・・・私はずっと、この機会を待っていました、私は呪いによって死んだ、
ですが輪廻転生を繰り返し、再びルディスのまえに現れることが出来たのです!」
「コリス・・・?」
彼女がコリスティ・・・コリスの前まで移動する
「ほら、この写真」
と言い、胸にぶら下がっているロケットペンダントを開ける
「・・・!」
ルディスの顔色が変わる
「やっと、帰ってきてくれたのね・・・コリス」
ぴかあっ!!!
「うっ・・・」
いきなりマスターの体が光り、
そこから青白く、透き通る、美しい女性・・・ルディスが、彼女の魂が現れた
「さあ、君の体を、とってこよう」
と言って、コリスがかき消える
「な・・・何だったんだ・・・今のは」
鈍感グレイが言う
「やっと、巡り会うことが出来たんですよ・・・」
ルーンが答える
「う〜ん・・・・」
と言って、いきなりマスターが起きあがる!
「きゃあっ!」
が・・・ルディスを見て、再び気絶する
「・・・ほっときましょうね」
あたしはそう言った
そして、みんなうなずいた
「皆様には、ご迷惑おかけしました」
コリスが言う
あのあとすぐにコリスがルディスの体を持って帰り
(どこかに安置していたらしい、コールドスリープさせていたため、年をとらなかったのだ)、
それに続いて魔術師の別働隊たちがミストを救出して
(ルディスはあたし達を自分の元へ集めるため、ミストをさらったそうだ、
何故あたし達を集めたか・・・と聞いたが、
「答えたくないので・・・」と言っていたため、あえて聞かずにいる)
部屋に入ったためえらいことになったのだが・・・
3時間に続く説明のかいがあって、無事誤解が解けたのだ
そして、その次の日・・・
「私たちはレイフィーリアの街で暮らすことにします」
レイフィーリアとはあたしとルーンの故郷である
「じゃ、お元気で」
あたしが言う
「お幸せに・・・それから、一つ頼みが」
「何でしょう?」
ルディスが答える
「僕たちも一緒に行ってよろしいでしょうか?」
そうなのだ、それからグレイをふんじばり、ルナを無事保護した、
・・・ルナは何か言いたげであったが、今日はとても元気で、機嫌がいい
そしてミストも「修行不足だった・・・」と言いつつあたし達と行動をともにすると言っている
『歓迎いたします』
2人の声がハモった
そうして、グレイを宿に残し、あたし達は帰路についた
それから2週間、平穏な毎日が続いた
お酒を飲んだルーンがディメイト・ブレイズを唱えかけたり、
あたしが呪文を暴走させて宿屋の壁をミディアム・レアに焼いたり、
ミストが夜中、「魔法の練習」と言って出ていった次の日、山が1つ消し飛んでいたり・・・
そうそう、ミストと言えばルナに気がある素振りを見せている、
ルナもルーンもまだ気がついてないようだけど・・・さて、どうなるのかなあ
本当に、平穏だった
“あの”男に出会うまでは
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