幻想大陸聖伝 テバジャ

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――第十三章――
望み
 

私のなりたいもの
 
っげしっ!!どかっ!!ばっしーーん!!

静かだった宿屋に思いっきり奇妙な音が響く。
「だれだぁーー」
「なぁーにしようとしたんだ、貴様ぁ!」
「不審者発見ですわぁーー」
続いて思いっきり大声が宿屋中を木霊する。

さっきまで眠っていたリーセとフォッグだけだった部屋は、何時の間にか2人増えていた。
その二人とは、もちろんケインとリリー。
ちなみに少し解説すると、
『っげしっ!!』←リーセがフォッグの腹を蹴った音。
『どかっ!!』←リリーが自分の武器のロッドでおもいっきり殴り倒した音。
『ばっしーーん!!』←ケインが自分の履いていたスリッパでフォッグの顔をアッパーした音。

つまり現在フォッグは・・・・・・
「・・・・・・」
リーセの蹴りで横に飛ばされながら、リリーに上方からロッドで殴られ、 ケインに下方からスリッパアッパーを食らい、 ようするに一度に三方向からの攻撃を受けてベッドの反対側にあった壁に直撃してぐったりしている。 もちろん壁に直撃した時に背中をかなり激しくぶつけていた。 したがってほとんど同時にくりだされた4方向からの攻撃によって、 一瞬でも気を失うほどのダメージを食らったのである。

いくら魔族とはいえ、人間出身な者だから、体力も人間と大差ない。だが、ある程度は鍛えたらしく、10秒間くらいの行動停止のあと、いきなり動き出した。 「っく!不覚!!」
何とか自前の体力で回復したフォッグは第一声にこう叫ぶ。
立ち上がろうとするが、どうやらリリーの一撃が相当効いたらしい(当たり前だ)。 どこかふらふらして、足が千鳥足になっている。
リーセは殺しちゃいけないと冒険者なりの感が働いたのか、ちょっと気絶する位に力をセーブしていた。
ケインも同じく感が働いたらしく、自分で殴るのをやめて(挌闘家だから力が強くて殺しかねない) 急いで自分のスリッパを脱ぎ、それで殴った。
だが何の経験も無く、女ながらにして神王女(ティーンのこと) 親衛隊長まで勤めるほどの攻撃力を持ったリリーは・・・
思いっきりロッドで殴っていたのだった・・・。

「何か人間じゃない気配がする、と思ったら・・・」
リリーはそう呟く。
「これだもんな。」
リーセの部屋の両隣の部屋だったふたりは、最初っからフォッグの存在に気づいていたらしい。
「俺だって一応はシーフだもんな。他人が忍び込みゃー気配くらい分かるんだぜ。」
そうリーセは呟くとフォッグに近づいていく。
「!!貴様はリリー!?」
フォッグはリリーを見るなりそう呟いた。
「フォッグ!!なぜここに!!」
そうリリーにしては珍しい叫ぶ姿を見て、リーセは足が止まる。
(フォッグ・・・フォッグ・・・えっ!?)
フォッグという名前について必死に思い出そうとするリーセ。
そんな時、ある一人のことが思い出された。
『ラムザの恋人であり、魔族三人王フォッグ・・・』

「フォッグ!?あのリリーの上官だった?」
「そうです。あの、三人王の・・・」
「スケールでかすぎで何がなんだかわかんねぇ・・・」
そう三人で(二人?)話していると、フォッグは立ち上がった。

「ふっ裏切り者めが・・・」
フォッグはそう呟くと、リーセのほうに近づいていく。
「な・・・裏切り者ですって!!」
そう叫ぶリリーを軽くあしらう。
「裏切り者だろう?上司である私と、いけ好かないグレスの野郎の命令に逆らったのだからな。
・・・まあ、私は、グレスの野郎から、 この魔族三人王である私自身の手でリーセを殺せとの命令を下されたんだが・・・気が変わった。」
「え?」
リーセの肩にフォッグは両手をかける。
「私も今日から裏切り者だ。リーセ。」
「・・・は?」
「鈍いな。くく・・・回りくどい言い方じゃ通じないらしい。」
「だからなんだって・・・」
リーセは続けようとしたが・・・
「きゃぁ、リーセさん!!」
「何しやがる、てめぇ!!」

・・・あとはご想像の通り。
「お前に惚れた。私も一緒に旅をするぞ。」

しばらくリーセは意識がどっか遥か遠くにぶっ飛んでしまったらしい。
ぼーっと突っ立っている。
そして10分位した後、ようやく言葉を発した。

「アリス・・・ごめん。」

(続く)

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