「はーっはっはっはっはっ!!」
神殿の中にメゾナの声が木霊(こだま)する。
『!!』
メゾナの声でほとんどの人は我に帰った。
唯ひとり、リ−セを除いて。
「早く回復魔法をかけなくては!!」
といい、メアリーは大鎌女、いや、アリスに近付いていく。
「我と契約を結びし神聖なる者よ
今ここにその力 解き放ち
彼の者の傷を癒し給え」
メアリーはアリスの傷口に両手を近づけ、神族との契約の呪文を唱えた。
メアリーの両手に白い球が現れる。
「あんな役に立たないものなど、初めから捨て駒よ。
殺したのは丁度正体がばれそうだったからもう潮時だと思ってね。
それにしても少しも役に立たなかったわね。
まあ人間にはそれが精一杯ということかしら……」
と、メゾナが言うとラムザが呟くように言った。
「メゾナ、あなたは馬鹿ですよ。」
“馬鹿”という言葉がメゾナのプライドを激しく傷つけたらしく、メゾナはラムザに怒鳴りつける。
「馬鹿、ですって!!私のどこが馬鹿なのよ!この魔族の私が!?ふざけないでよ!!」
「べつにふざけていませんよ。ただホントのことを言ったまでですよ。
だって、リ−セが神族と魔族のハーフだってこと完璧に忘れていませんか?
あの女性を傷つけたばかりでなく、そんな愚弄する言葉まで。リーセを怒らせてどうするんですか。」
「!!」
「全く馬鹿ですよ。魔族という者は皆そう馬鹿なのですか?」
「……しまった……」
「やっと気づいたようですね。」
「ラムザさん!この子……アリスさんです!行方不明だったアリスさんです!」
服を剥ぎ取ったメアリーがさけんだ。
「メアリーさん、アリスさんの容体は?」
メアリーは脈拍を測りながら答える。
「傷自体は急所を外れているのでそんなにひどくありません。でも出血がひどくて・・・・・・」
その時、リーセが急に歩き出し、アリスの身体から流れた血の池へと入ってきた。
そして、その中に手を浸した。リーセの顔を良く見ると涙が流れ落ちている。
しかし、顔は悲しい顔をしてはいない。いや、どちらかというと笑っている状態に近かった。
「ア…リス……。アリ……ス…」
呪文でも唱えるかのように、“アリス”という言葉を繰り返すリーセ。
それは狂っているかのようでもあった。そして顔をいきなり上げ、
「アリス!!」
と叫ぶ。
「リーセさん……」
まるで憐れむかのように呟くラムザ。
リーセは四つん這いになってアリスに近付いていき、アリスを抱いた。
強く、アリスが折れてしまうほどに。
「アリス……」
パアアアアアァァァァァァ
その時、リ−セの身体の周りに白いオーラができた。
そのオーラは見間違いだろうか、三対の翼にも見える。
そのオーラはアリスの傷口に吸い込まれていく。そして 、
アリスが動いたように見えたのは、気のせいだろうか……
「んっっ」
今にも死にそうなアリスの口から声が漏れる。
「アリス!!」
まず、気が付いたのはやはりリーセだった。
リーセは手を緩め、アリスの顔を覗き込む。
「アリス!!」
「リー……セ??」
まるでうわ言のように呟くアリス。
「アリスさん、気が付いたのですか?」
メアリー、ぺーシャ、ラムザが近付いていく。
そのあと、一瞬にして、辺りの風の雰囲気が変わった。そして、リーセが呟いた。
まるで、地獄からのうめき声のような、恐ろしい声で。
「メゾナ、貴様……」
顔は、まるで鬼神の如く。そして、目は、美しい蒼色ではなく金色になっていた。
髪は逆立ち、周りに風を纏って。
「ああ、ああぁぁぁ!!」
メゾナはあまり、顔が青ざめている。
「なんなのよぉ、この圧力(プレッシャー)はぁ。
この地の底から響いてきているような、この雰囲気は……。
待てよ、この雰囲気は誰かに似ている……。そうか、前魔王!!ギャラクシィ様!!」
「何でもいい……。死ね……。」
「いやあぁぁぁぁぁ!!」
一瞬のうちに、メゾナは消えていた。霧のように消えた訳でもなく。
そう、それは、瞬間移動するかのように。
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