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――第八章―― |
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善と悪 |
辺りに広がるは一面の海。耳に届く音は波の音のみ。 雲一つない空を、カモメ達が飛んでいく。潮風が心地いい。 程よい日差しも、その潮風を引き立てているようだ。 海は日の光を反射して、きらきら輝いている。 俺達は、アレンを出て、海を挟んで対岸の港町オニスに向かっている。 もちろん船は貸しきりで、俺達のほかには客は誰もいない。 俺とアリスは甲板へ出て、ラムザとリリーは船室にいる。 ケインは船の中を歩き回っているらしい。 船は結構大型で、俺達五人にはもったいないくらいだ。 「おい、そんなに身を乗り出すと危ないぞ。」 アリスは、かなり柵から身を乗り出している。 しかし、アリスはそんなことお構い無しに更に身を乗り出す。 「大丈夫だってば。リーセもそんな辛気臭い顔してないの。ほら笑って笑って。」 そういって、俺の頬をつねる。 「まあ、理由は分かるけどね。ケインが付いてきた事でしょ? 俺達の闘いに巻き込まれるから、連れてきたくなかったのにって。でも私、嫉妬しちゃうな。」 アリスは俺のほうを向いて、柵に手をかけて寄りかかる。 「え?」 「だって、リーセにそこまで心配されてんだもん。私は、どうなのよって感じ。 私は巻き込まれてもどうでもいいって、感じでさ。 あっそんなに困った顔しないでよ。私は大丈夫よ。マグナーシュもあるしね。 そんな事よりもさ、私はリーセに必要されているという事のほうがうれしいのよ。 それよりも私とケインとじゃリーセの心の中で閉めてる場所が違うし、闘ってもしょうがないじゃない。」 そういいながら微笑む。 丁度日の光がアリスの右側からあたり、とても綺麗だ。
「リーセめーっけ!!」
やばい。やばいぞ。
「答えは、決まりましたか?」
「一緒だろぉ!お前ら幻想戦争で何人死んだと思ってんだよ!
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言葉と影 |
コンコン ラムザの部屋のドアをたたく音がする。 「はい。鍵は開いていますよ。」 人がドアを開け、部屋に入ってくる。 ラムザは中央の円形テーブルの脇の椅子に座り本を読んでいる。そして光が遮られたので、上を見る。 「おや、リリーさんじゃないですか。どうかしたんですか?」 ラムザはさりげなく右手で向かい側の椅子を差し、リリーが座るのを勧める。 リリーは迷いもなく椅子に座る。 「ラムザさん。いいえ、ラムザ様。一体なにをなさるつもりなのですか?」 「…………何で、ですか?」 ラムザは本をたたみ、テーブルに置きながら、リリーのほうを見る。 「まずは第一にケインさんを危険は分かっていたはずなのに何故連れてきたのか。 第二に何故リーセ様に付いて来るのか、ということですわ。」 リリーはそう言い、瞳を閉じる。 「そうですね。二つ目の質問は簡単ですよ。リーセは私の部下ですから。」 「嘘を付かないで下さい。リーセ様が伝説のテバジャだって事知ってて近付いてきたんでしょう。」 ラムザは椅子を離れ、テラスに出て海を見つめている。 「本当に偶然ですよ。リーセと出会ったのは。とてもびっくりしましたけどね……」 ラムザは潮風に髪をなびかせ、昔を懐かしむように瞳を閉じた。 『リーセが13歳の夏のことでしたね。私がストリートキッズの集う通りを通った時でした。 ビルとビルの間で喧嘩をしていたんです。 ストリートキッズの喧嘩はしょっちゅうの事ですが、私はなぜか目を離せなかった少年がいました。 人数的にはもう一対五でもうぼろぼろでしたが、少年の目は輝いて見えました。 私は少年に惚れてしまったのでしょうね。少年を知らないうちに助けていました。 少年を助けると私ははっとしましたよ。彼の瞳はサファイアのように、真っ青でした。 これは何か有りそうだと思い拾ったんです。 その後、リーセが伝説のテバジャだという事を彼のロケットを見て知りました。 アリスさんも同じです。町をさ迷っていたところを、彼女の真っ赤な瞳に惚れて引き取ったんです。 二人は引き取る前に試験であっていたようですよ。受けたのは大分昔のようでしたけど。』
「…………」
ラムザはリリーのとなりに来て言う。
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未来のことを… |
「リーセ様!」 リリーが階段を上り、甲板へ出た。 「どうしてユースがここに!」 リリーはそう言うと俺を見ていう。 「リーセ様!気をつけてください!ユースは神族でも有名な殺し好きです!」 「殺し、好きぃ!?」 ケインが言う。 「俺以上だわ……」 ケインはあらまあと言うような顔をしながら言う。 「お前…殺し…やってたのか?」 俺が聞くとケインはとぼける。 「やってないってば。」 「……」 「おや、リリー様ではないですか。 ティーン様の親衛隊長である貴方がティーン様をお守りしなくてはしょうがないでしょう。 早く戻って下さいよ。」 ユースはそう言い右手を差し出す。 するとリリーは声を大きくしながら、 「私は今までティーン様を尊敬していました。 あの神族のために身を危なくしてまでささげる姿はとても汚れのないように見えました。 他の神族とは違うように見えました。」 リリーは声を張り上げ叫ぶようにしていう。 「あの方も他の親族と一緒だった!! 自分達一族のためならば自分の子供の意思も考えない! 自分の一族のほうが子供よりも大切なのよ!! それに私はリーセ様に惚れています! あそこまで人を愛せるだなんて。 私はアリスさんを見つめているリーセ様に惚れたのですわ! 愛する事の素晴らしさを教えてもらったのですわ!」 リリーの頬から涙がこぼれ落ちた。 「……」 俺は泣き叫ぶリリーに何も言えず、黙り込んでいた。 「そうですか。それでは貴方も敵にまわると?」 「……なんとでも受け取ってかまわないわ。」 ユースは目を閉じ、ギッと瞳を開け叫ぶ。 「敵は蹴散らすのみ!!!!」 リリーにユースが襲い掛かる。 「リリー!!」
リリーは間一髪の所でかわしユースの爪が頬をかすめるだけですんだ。
ユースは再び身を翻しリリーに襲い掛かる。
(俺は何のために闘っているのだろう……
俺は肩を押さえているケインを見る。
(!!
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