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――外伝 コランダム―― |
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0.コランダム |
この世の混沌を最初に創造した者、即ちカオスは 血を分けた子とも言える、次の世界を創造する者、テバジャを残した。
カオスは右に赤い瞳、左に青い瞳を持っていたという。
しかし、人間は過ちを犯したため、
それを遥か遠くから見ていたカオスは、嘆き悲しみ、
それから、約600年後、二つの宝玉の輝きが増した時、
この話は、その民族の違う二人の導いた、
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1.蒼き瞳 |
「んねえ、いいでしょ?ねえってば!きいてるの?サファイア!」 赤い瞳を持ち、背中に髪と同じ黒の羽を持つ少女は、 目の前にいる、蒼い瞳を持っている銀髪の少年に抱き着く。 蒼い瞳の少年は、赤い瞳の少女を振りほどき言う。 「もちろん聞いている。でもな……」 「何よ!ただ一緒に遊んでって言ってるだけじゃない!」 赤い瞳の少女は、頬を膨らまる。 「まずその羽をしまえ。ここは神族のテリトリーだ。魔族であるお前の存在がばれたら一大事だからな。」 蒼い瞳の少年は、そう言い、向こう側にある、本を取ろうとする。 「だめえ、これは私の象徴なの!」 赤い瞳の少女は羽を摘まみながら言う。 「だったら、とっとと自分のテリトリーに帰ったら?見つからないうちに」 「ふみゅ〜」 赤い瞳の少女はまた頬を膨らませ、いう。 「大丈夫よ!抜け道知ってるし。見つかるわけないわ。」 赤い瞳の少女は蒼い瞳の少年の腕を取り、 「だからぁ、いいでしょ?わたしサファイアと一緒にいたいの。」 はぁ、 蒼い瞳の少年はしょうがない、と言うような顔をして返事をする。 「わかったから。途中まで送っていくよ。それでいいだろう?」 赤い瞳の少女は、ぱぁっと顔を輝かせ言う。 「うん!」 (何で俺ってこうもこいつに弱いんだろう) とかと考えながら、赤い瞳の少女の手を放した。 今から考えると、この時から世界の破壊の序曲は始まっていたのかもしれない。 神族と魔族。決して相容れない存在。 それを覆そうとすれば、大変な事が起こる、と言う事を彼らはあまりにも知らなすぎたのかもしれない。 そして、また彼らは愛、というものの力を甘く見すぎたのかもしれない……。
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2.紅き瞳 |
「何で俺、ここにいるんだ?」 蒼き瞳を持つ少年は、通風孔を屈みながら前にいる紅き瞳を持つ少女に付いて来る。 「し〜。」 紅き瞳を持つ少女は、右手の人差し指を唇に当てる。 「何で俺はルビーの家にいるんだ?」 蒼き瞳を持つ少年は、少女に尋ねる。 「静かにしてよぅ。私の部屋は離れだから絶対に見付からないってば。だいじょぶじょぶじょぶ。」 「ルビーの家は確か科学者だったろ?しかも国付の。俺見つかったらヤバイだろ。」 「とかいいながら付いて来るサファイアもサファイアだけどね。 まあ、いいじゃん。来ちゃたもんは来ちゃったで。帰り道教えるしね。 羽もしまってるしだいじょぶじゃない?」 紅き瞳を持つ少女は、通風孔の出口を指す。 「ほら、あそこを出ればすぐだよ。大丈夫。見つかんなかったでしょ?」 「っていってもなあ、帰り道で見つかるかもしれないだろ。」 「ほら、ここ柵になってるから、気を付けてねん。見えちゃうかも。」 ここの通風孔は部屋の横についていて、柵は丁度中が見えるようになっている。 「どうやら、ここは研究室のようだな。」 蒼き瞳を持つ少年が柵に触って研究室をみたその時だった。 シュワァァァァ……ン あたりを黒い煙が覆った。 「うわ、何よこれ?サファイア、大丈夫?」 紅き瞳を持つ少女は後ろを向いた。 「サファイア?どうしたの?サファイアァ!」 蒼い瞳を持つ少年は、もうその髪は金色ではなく、その透き通った白だった筈の肌は、褐色色になっていた。 「ううっ。」 蒼き瞳の少年は悲鳴を上げる。 「何よこれぇ!サファイアの羽がぁ!黒くなっちゃてるよぉ!」 紅き瞳の少女は蒼き瞳の少年を、抱きしめた。 「いやぁぁぁぁぁぁあ!!!」
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3.白き翼 |
ここは、神族・魔族の唯一の共有地である「エルピス処刑所」である。 ルビーと密会していた事がばれたサファイアは、即座に連行されエルピス処刑所に連れてこられた。 処刑所とはいってもコロシアム状で、公開処刑所となっていた。 サファイアはコロシアムの中央で、後ろで手は組まれているが形的には四つん這いの格好をしていた。 身体はもうぼろぼろで、ただ認識できるのは親族の証である金の髪とは対照的に存在する、 黒く染まった羽だった。 「ここで、このサファイアの罪名を公表する。」 黒いマントをかぶっている処刑人は、右手に巻き物を持ち、それを広げ掲げる。 「この男の罪は条約破棄のためのスパイであったとする、不法侵入罪である。」 会場はざわめく。 「なっ……そんな。真実をいってくれ!」 (どうせばれるなら、真実を告げてくれ!) サファイアは心の中で唱える。 「うるさい!」 「うっ」 処刑人はサファイアの腹を思いっきり膝蹴りをする。そして、吹き飛んだサファイアに耳打つ。 「お前が忍び込んだ時にルビーはいなかった事にしてあるんだ。 彼女がいた事がばれてみろ。ルビーもおんなじめにあうんだぞ。 かわいそうだとは思わないか?思うんだたったら黙ってる事だな。」 そういい、膝蹴りをもう一発いれる。 「がはっ」 サファイアは口から血を拭き出す。 処刑人はサファイアの胸倉をつかんでいった。 「なあ?そうだろ?」 処刑人はつかんでいた手を放し、代わりに側にあった剣を取る。 「この剣はな、偉大なる創造主カオス様の剣の欠片ともいわれている『エルピスの剣』だ。 この剣で切られる事を幸福だと思うことだな。」 処刑人は剣を鞘から抜き取り構える。 (俺は殺されるのか?だったらせめて、ルビーの声が聞きたかった。 俺はまだあいつに言ってなかったんだ。 言ってもらうばかりで自分では言わなかったんだ。好きって言葉を。) 「ほら、素敵な色だろ?金とも言えなく、銀とも言えないこの色。 悪く例えるならばお前のようだな。」 処刑人は剣をなめる。 「ん?中が騒がしいようだな?どうしたのか?」 処刑人は剣を置き、ドアのほうを見る。 「サファイア」 小さく声が聞こえる。 「サファイア!」 そう、それはサファイアが聞きたかった声だった。
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4.黒き翼 |
「サファイア!!」 紅き瞳の少女はドアを開き、処刑場に入ってきた。 「サファイアァ!!」 紅き瞳の少女はサファイアに抱きついて、 「大丈夫?ねえ?大丈夫?」 そう聞くのだった。 「ああ。」 紅き瞳の少女は、サファイアの声を確認して、後ろを振り向き、処刑人に向かって言う。 「殺すのならあたしも殺して。罪は同じよ。不法侵入罪でね。」 会場はざわめくが、少女は気にしない。 「なっルビー、貴様は我が魔族を裏切るのか?」 「裏切る?あたしが?違うわ。 あたしはただ、サファイアを愛しただけ。いけない? あなた達が魔族を好きになったのと同じようにあたしはサファイアを愛しただけよ。 何で魔族と神族は愛し合ってはいけないの? 大体、神族とか、魔族って何? 何で争ってるの?何故、戦ってるの?」 そう聞かれて、処刑人は戸惑う。 「とっ、とにかく愛し合ってはいけないのだ。それに不法侵入は不法侵入だ。条約を破棄したのだ。 草々に処刑しなくてはならない。」 紅き瞳の少女はサファイアの前に立ちふさがる。 「貴様……。邪魔するならお前から殺してやるぞ。それが望みなのだろう?」 紅き瞳の少女は目を閉じ、最期にこう呟いた。 「生まれ変わっても、又愛し合おうね……」 処刑人はエルピスの剣を振りかざし紅き瞳の少女の身体の寸前に来た時だった。 ドンッ
紅き瞳の少女とサファイア、エルピスの剣以外の全てが燃えた。
その声を最期に二人とエルピスの剣以外は消滅した。
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5.破壊・・・そして再生 |
「誰でも愛し合える世界がいいな……」 紅い瞳の少女が言う。 「そうだな。俺達にはもう、神族魔族を消滅させる力はもう無い。 でも少なくとも、こんな悲しい戦いが起こらないように、人間を創ろう。 仲介者として人間を作るんだ。そして、神魔族を滅ぼすのは次のテバジャにしてもらおう。 その神魔、両方の力を持つ人間に、神族魔族を滅ぼしてもらおう。」 くすっ と少女は笑う。 「なあんか、矛盾しているような気がするんだけど……」 「要するに、神魔で争うのを止めたいんだ。もう俺達のような悲しみを造ってはいけない。 ならば、一種族にしてしまえばいいんだ。 神魔族はお互いがなくては生きていけないからね。だから人間を作るんだ。」 「ふぅーん」 紅い瞳の少女はまだ納得いかない様子だ。 「まあいいや。サファイアがそれで納得しているんなら。」 サファイアはエルピスの剣を持つ。 その手に紅い瞳の少女の手が重なる。 「ねえ。」 少女が言う。 「さっき言った言葉、覚えてる?」 「え?さっきって……まっまーな。」 と言いながらサファイアは照れる。 「うん。また、会って、愛し合おうってやつ。こうしようよ。 お互いに人間になって、自由に愛し合うの。いいでしょ?」 「わかった。そうしよう。」 剣を振り上げ、空間を切り裂く。 「また、会おうね……」 「ああ……」 そう言い残して二人は蒼、紅の二つの宝石に戻った。
新しい世界は、前の世界と同じ地理になったが、ただ一つ、違うことがあった。
新しい世界が創られてから約600年後、 再び…… 出会った……
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